October 19, 2002

8 Rebuild Work (1/8)---- Cylinder Block,Crankshaft

The Machine Shop  内燃機加工屋さん
Cylinder Block,Crankshaft
今回の修理で一番の課題であるブロック修理とクランクの加工について.必要なことはブロックトップデッキの亀裂の溶接,バルブシートの交換,シリンダボアの加工,クランクシャフト ピン,ジャーナル軸の加工である.内燃機加工屋さんの知り合いや伝手があるわけではなく,加工屋さんをネット検索で探す.シリンダ,クランク.バルブシートなどの加工は定番なようで作業価格なども情報公開されており,とても参考になった.しかし,今回の場合,鋳鉄ブロック亀裂の溶接というのがあり,それについては個々に確認しなければならない.当初,私は学校でならった浅い知識レベルで鋳鉄は溶接なんかできないと思い込んでいた.ブロックに使われるねずみ鋳鉄,FC材,片状黒鉛鋳鉄 文字通り鉄の基地(きじ)に黒鉛が片状に分散している.溶接では局所的に高温になり冷却されるため,そのひずみ変化は黒鉛部分で応力集中となり,割れを生じやすいためである.これまたネット検索すると,鋳鉄の溶接は困難なものではあるができないことはないことがわかった.ひずみ変化をやわらげるため,予熱,冷却,溶接方法の工夫,作業者の熟練さで可能とのことで,修理することへの希望となった.

いろいろ加工会社を拝見させていただいた中で,福知山の木村内燃機様にお願いすることにした.自主制作されているウエブサイトで,穴のあいたアルミブロック,ヘッドの亀裂などの画像とともにこれは直ります,これは直せませんと紹介.「いろいろな方法でいろんなものを直します.できないこともありますが,できること 結構あります.」という言葉に惹かれてしまった.9月のはじめに,ブロックの亀裂やバルブシートの状態などの画像とともに打診.すぐに返信があり,鋳鉄ブロックの亀裂は直せますとのこと.詳細は現物確認で調整ということで.そして,ピストンやベアリングなどUSAパーツがそろったところで,ブロックとクランクを持って訪問した.
工場のたたずまいは,想像どおり,文字通り,内燃機加工.工場内はたくさんの仕事をしてきた雰囲気をもつ,重厚な工作機械が立ち並び,金属という材料に精度と機能を吹き込む工房である.早速現物を診ていただき,修理内容の相談.ほぼ事前にやりとりしていた内容でいけそうな感触で後日,見積もりと加工開始の連絡をしていただけるとのこと.溶接についてはここではできないため,溶接熟練の方がおられるところへ依頼するとのこと.過去にJH4も実績があり加工データもあるらしいとのことでますます心強くなった.なんとクロスカントリーヴィークル誌(CCV)もご覧になっているとのことで,楽しくお話させていただいた,加工品の確認のためにUSAパーツのピストンとベアリング,コンロッド等を預けて工場を後にした.その日の夕日はきれいで心もほっとした.
Cylinder Block 
・亀裂の溶接修理&水圧テスト
ヘッドボルト雌ねじ再生 UNC 7/16-14
・シートリング交換
インサート持込 銅溶浸焼結合金 φ40+0.133~0.155 高さ 7.7±0.1
締め代:0.07ねらい 穴深さ:7mmねらい 常温圧入で可. 
・トップデッキ面研磨(最小限)
No.2,3 燃焼室にさらされる面にでこぼこ様相.これは水が入って燃焼運転されるとこのようになるらしい.バルブシート周りに溶接補修があったので過去にそこが割れて水が入ったのかもしれないとのこと.
・ボーリング オーバーサイズ加工 +1.00mm(0.04inch)  
ピストン標準クリアランス 0.053~0.074 0.05ねらいとした.
・下部オイルパン雌ねじ修正
当方がねじ切ってねじがはいったままにしていたもの.

Crankshaft
 ・軸研磨 -0.05mm(-0.02inch)メタル仮組み測定
 標準クリアランス範囲より下限レベルをねらう軸径とした.

約2週間後,完成のメール. 甦ったブロックとクランクシャフト.なんともいい金属の輝き.完璧な仕上がり. ブロックの溶接部は応力を分散できるように,亀裂のあった部位とボルト穴周りに大きく施されていた.局部的であると溶接境界が弱点となりやすいが,これなら心配はない.バルブシートは銅溶浸材のため銅色が現れている.
バルブシートカットは自分で挑戦することにしたため,依頼しなかった.(我ながらセコイ.一緒にやってもらっても良かった) USAパーツの精度はきちんとあったとのこと.内燃機加工は奥が深く,加工料金は決して安くはないが,この仕上がりを見れば納得。 甦ってくれた充足感がある.とても勉強になった.


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