2.Inspection 原因
3.Decision 決意
4.Dismount 行動
5.Tear Down 分解
6. Strategy 作戦
7. Procurement 調達
8. Rebuild Work 作業
9. Assemble 組立
10. Firing 始動
その昔、エンジンは、その性能が劣化すると、部品の修正や交換により、よみがえり働きつづけるものでした。モノを無駄にしない、使えるものは大事に使い、交換するところは最小限に。大量生産、大量消費 一時的にはよくても永続的にはろくなことがない。その影で質と真の豊かさが薄れていく。このエンジン、今となっては時代遅れ、品質がいいともいえません。しかし、その形のあちらこちらに当時のモノづくりの一面が垣間見えます。捨てることができず、素人的貧乏作業でリビルドに挑戦した記録です。
J3Rは三菱製の亜流ジープ、基本設計はアメリカのWillys Overland社。1952年から製造されたCivilian Jeep CJ3Bを新三菱重工業で国産化、右ハンドル化したもの。搭載エンジンはオリジナルジープ MB/GPWのL4エンジン(吸排気サイドバルブ)から出力を増大させるために、吸気バルブをオーバーヘッドに配置、バルブの大径化と圧縮比アップをはかったもので Hurricane-4 と呼ばれる。(アメリカでは F134 Fヘッド式、134は排気量でcubic inch)日本で作られた Hurricane-4 ということで、三菱製のエンジン型式は Japan Hurricane 4 から JH4 となる。1953年から1972年ごろまで作られたロングセラーエンジンだそうです。
エンジンの性格を表す指標、ストロークS/ボア径Bの比(S/B)があります。S/B<1 は高回転型 S/B=スクエア S/B>1 は低回転トルク型となります。JH4のS/Bは1.4です。(下表参照) クロスカントリーユースにおいてトルクがあると定評の4DR系ディーゼルエンジンが高回転型エンジンに思えるほど、JH4はガソリンエンジンでは稀なロングストロークのエンジンということです。アイドリングは極めて静粛。ひとたびスロットルを開くと、そこそこのトルクがもりもりと引き出される。特にほどよく負荷がかかった状態では、ロングスロークの仕事をこなした燃焼ガスが独特のサウンドを奏でる。それがハリケーンサウンド。フルオープンで山間部を独り当てもなくハリケーンサウンドに包まれて、ジープを流すときの至福感ときたら・・・ 変態ですな。
ハリケーンサウンドのえも言われぬ余韻
Manufacturer | Engine | Liter |
Stroke (mm)
| Bore (mm) |
S/B
|
---|---|---|---|---|---|
Willys | L134 Go Devil | 2.2 |
111.1
| 79.4 | 1.40 |
Willys | F4-134 Hurricane | 2.2 |
111.1
| 79.4 | 1.40 |
Mitsubishi | JH4 | 2.2 |
111.1
| 79.4 | 1.40 |
Mitsubishi | KE31(Diesel) | 2.2 |
111.1
|
79.4
|
1.40
|
Mitsubishi | KE47 | 2.3 |
102.0
|
85.0
|
1.20
|
Mitsubishi | 4DR50/51(Diesel) | 2.7 |
100.0
|
92.0
|
1.09
|
Mitsubishi | 4G53 | 2.4 |
98.0
|
88.0
|
1.11
|
Mitsubishi | 4G52/G52B | 2.0 |
90.0
|
84.0
|
1.07
|
Mitsubishi | G54B | 2.6 |
98.0
|
91.1
|
1.08
|
Mitsubishi | 4DR6(Diesel T/C) | 2.7 |
100.0
|
92.0
|
1.09
|
Mitsubishi | 4DR52(Diesel I/C T/C) | 2.7 |
100.0
|
92.0
|
1.09
|
私が所有する機は1972年式で後期型。エンジン No.JH4-931543。1996年より、俄で取り繕い、なんとかナンバーを取り使いはじめた。 2002年のある日、とある上り坂を走行中に突然パワーダウンで失速する。なんとか無事に帰宅したものの、翌日より燃焼のばらつきがひどくなり始めた。圧縮圧力はNo.4シリンダが3kgf/cm2以下とあきらかに圧縮抜けの症状。その状態でも走れることは走れ、通勤に使用していたが、やはり排ガスの悪化と明らかなパワーダウン。何よりもハリケーンサウンドが響かないのが優鬱であった。さて、どうしたものか。1972年式で古い、高性能ともいえない。遅いわは燃費も悪いわで、これからも維持するのか。実生活と趣味、どちらが大事なのだと悩む。しかし、ジープはやはり好きである。シンプルな姿。それが道具としては頼りがいのあるところである。できることなら、そばにおいておきたい。また、このエンジンの構造にはエンジン関係の仕事からも興味があった。こんな簡単な構造のエンジンを修理できなくてどうすると、自力でオーバーホールすることにした。
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