November 04, 2002

8 Rebuild Work (3/8) ---- Head Bolt, Oilfilter, Front Plate

Bolt,Cylinder Head
ヘッドボルトは1ボア周り6本締めで全部15本締めである.1本はキャブレータの下,インマニ相当のヘッド内部での締結となるため短いボルトとなる.はずしたボルトを掃除して眺めているとなんかねじ部が変だぞ.ねじ部をUNC7/16-14ピッチゲージにて伸びがないかチェック.あら ねじ部は若干のびていた.特に短いやつが伸びが明らかであった.伸び長さが短いため,ヘッド締結の負担がでているのだろうか.JH4の締め付け条件はトルク法であり,弾性領域の締め付けであれば,塑性伸びは発生しないはずであるが,ヘッドの熱膨張もしくは過締め付けが原因であろう.ねじ部が伸びているとトルク締めのときのトルク係数が変化するので,必要な軸力がでない恐れがある.
ボルトの仕様 サイズ UNC(unified coarse)7/16-14(ねじ部予備径 1inch当たりの山数)
長いのは 三菱純正を入手(MM100131 ¥440)短いのは不可(J801000)であった.短いのは何かしら既製品であるかなと思っていたが 強度区分10.9以上(11T)というのものがすぐに見つけることができなかった.首下軸部がねじ部より若干太いボルトなので伸びて使わない長いやつを切って,それにねじを切ってつくることにした.画像(右端)は失敗,よそ見をしていたら歪んでねじを切ってしまった.これで ヘッドボルトは準備完了.

Oil filter&Bracket 
オイルフィルターとブラケット,オイルフィルターケースは分解して清掃,塗装した.ブラケットはなんとブロック側に固定するボルト穴ボスが破損(下図の赤い線)しており,ヘッド側だけで保持されているブラブラ状態であった.このブラケットは部品入手できなかったので,溶接した.

Front Plate & Mount
フロントプレートはエンジンマウントブラケットとジェネレータマウントもかねるプレートである.今時のエンジンであれば,大概別々の部品であり,この構造はなかなか優れていると思う.ただ,今回のものは エンジンマウントと接続する足となる部分で変形していた.万力に固定して叩いてもどした.古い塗膜と汚れを除去,塗装した.マウントシンシュレーターは汚いがゴムの切れなどはなく,まだ使えそうなので,清掃してゴム部には酸化劣化の防止をねらいシリコーン(信越KE45)でコーティングしておいた.





October 23, 2002

8 Rebuild Work (2/8) ---- Cylinder Block,Crankshaft 

Crankshaft
引き取ってきたクランクシャフトは切り粉などが残らないよう油穴通路の清掃,ピン,ジャーナルは研磨したことにより表面での油穴のエッジがたっているので適当なドリルでもんで面取りを行った.酷い汚れもなく,クランクシャフトはこれでベアリング類とともに保管して組み立てに備える.

Cylinder Block - EX Valve Guide
懸念であった亀裂,バルブシートの交換はうまく終了した.次にバルブガイドの交換とバルブラッピング(摺り合わせ)である.バルブガイドであるが,新品バルブを挿入してみると,ガタが大きく少し首振り状態にあった.バルブガイドはUSA輸入パーツでO/Hキットに入っていたものを使用.キットの部品ははOMIX-ADAよりまとめらているもので,各パーツのメーカはさまざまで.ガイドはどこのものか確認できなかった.整備解説書にあるようなやり方でやってみたが,まったく抜けない.トーチで加熱したり,ボルトとつかって引き抜こうとしてもまったく抜けない.
最終的に100tonの荷重まで負荷できる設備があるところに持ち込み抜くことに.適当なボルトで当て治具として荷重をかけていった.1ton 2ton 3ton まだ荷重の指針は動く・・・ 次の瞬間 バキン という大音響. ブロックが逝ったか!! 観察してみるとガイドが動きはじめている.抜けた・・・.ふぅ良かった.結局No.1~4と抜き荷重は3.5~4.7tonであった. 新品ガイドにオイルを塗布して,ブロックトップデッキからガイド上端の位置が1inch(25.4mm)のところまで圧入.約2ton前後であった.整備解説書のようなやり方で抜けるのであろうか.JH4をやった方々のご経験をお聞きしたいところである.液体窒素を使うのかな.

▲参考 バルブガイド抜き、組み付け
長ナット、棒ねじを使う。

Exhaust Valve Seat Cutting , Rapping
まず準備した排気バルブのこと.オーバーホールキットについてきたも Federal Mogul社のSealedPowerブランドの製品であった.(無鉛対応) そしてもうひとつは Kaiser Willys Auto Supplyから購入したStelliteと表記されたいたもの(型番928342 V-1681).吹き抜けたJH4についていたバルブ(三菱マークがなかったので純正なのかどうかは不明 431と浮き出し)がある.材料の耐熱性を確認するために磁石でたしかめた.(左から FederalMogul社,KaiserwWillys社の,吹き抜けたJH4についてたやつ) 
排気バルブになどに使用される耐熱鋼は金属組織がオーステナイト組織であれば磁性を持たないのである.元々ついていたバルブはパチコーンと磁石が引っ付いた.FederalMogul性は弱く磁性をもっていた.Kaiserのものは全く磁性がなかった.簡易的にバルブ傘部の横を研磨して金属組織を観察した.Kaiserのバルブは 耐熱鋼SUH31に近い組織であったが,ステライトの組織は観察できなかった.盛金ではなく溶射程度なのだろうか.今回は磁性の有無の面からも耐熱性を期待できるKaiserからのものを使用することにした.
入手したバルブの組織写真 (左:KaiserW 右:FederalMogul ) 
Kaiserのものは 下のSUH31に近い粒状炭化物が見られる.

標準組織写真 (左:オーステナイト系耐熱鋼SUH31   右:ステライト コバルト耐熱鋼)
参考:排気バルブの重量計測結果[g]
Kaiser(V-1681)
1:118.1 2:117.4 3:118.1 4:117.7
FederalMogul 
 1:118.6 2:118.3 3:118.9 4:118.6

バルブシートカットはカッターを入手できたので自分でやることにしていたが,これを失敗すれば熟練の加工屋さんの成果をすすべて台無しにすることになるので,かなり緊張した.やるしかない,いけ~!という感じにやった.なんとかできた.カットした後はバルブコンパウンドにより摺り合わせをした.これでブロックに関することはほぼ終了で組み立てに備える.


バルブフェースとシートとの当たりの確認には,PILOT社ペイントマーカ 中字 ピンクカラーを用いた.バルブはリテーナとともに回転するため,ある程度全周があたっておれば,運転にてなじむだろう.

October 19, 2002

8 Rebuild Work (1/8)---- Cylinder Block,Crankshaft

The Machine Shop  内燃機加工屋さん
Cylinder Block,Crankshaft
今回の修理で一番の課題であるブロック修理とクランクの加工について.必要なことはブロックトップデッキの亀裂の溶接,バルブシートの交換,シリンダボアの加工,クランクシャフト ピン,ジャーナル軸の加工である.内燃機加工屋さんの知り合いや伝手があるわけではなく,加工屋さんをネット検索で探す.シリンダ,クランク.バルブシートなどの加工は定番なようで作業価格なども情報公開されており,とても参考になった.しかし,今回の場合,鋳鉄ブロック亀裂の溶接というのがあり,それについては個々に確認しなければならない.当初,私は学校でならった浅い知識レベルで鋳鉄は溶接なんかできないと思い込んでいた.ブロックに使われるねずみ鋳鉄,FC材,片状黒鉛鋳鉄 文字通り鉄の基地(きじ)に黒鉛が片状に分散している.溶接では局所的に高温になり冷却されるため,そのひずみ変化は黒鉛部分で応力集中となり,割れを生じやすいためである.これまたネット検索すると,鋳鉄の溶接は困難なものではあるができないことはないことがわかった.ひずみ変化をやわらげるため,予熱,冷却,溶接方法の工夫,作業者の熟練さで可能とのことで,修理することへの希望となった.

いろいろ加工会社を拝見させていただいた中で,福知山の木村内燃機様にお願いすることにした.自主制作されているウエブサイトで,穴のあいたアルミブロック,ヘッドの亀裂などの画像とともにこれは直ります,これは直せませんと紹介.「いろいろな方法でいろんなものを直します.できないこともありますが,できること 結構あります.」という言葉に惹かれてしまった.9月のはじめに,ブロックの亀裂やバルブシートの状態などの画像とともに打診.すぐに返信があり,鋳鉄ブロックの亀裂は直せますとのこと.詳細は現物確認で調整ということで.そして,ピストンやベアリングなどUSAパーツがそろったところで,ブロックとクランクを持って訪問した.
工場のたたずまいは,想像どおり,文字通り,内燃機加工.工場内はたくさんの仕事をしてきた雰囲気をもつ,重厚な工作機械が立ち並び,金属という材料に精度と機能を吹き込む工房である.早速現物を診ていただき,修理内容の相談.ほぼ事前にやりとりしていた内容でいけそうな感触で後日,見積もりと加工開始の連絡をしていただけるとのこと.溶接についてはここではできないため,溶接熟練の方がおられるところへ依頼するとのこと.過去にJH4も実績があり加工データもあるらしいとのことでますます心強くなった.なんとクロスカントリーヴィークル誌(CCV)もご覧になっているとのことで,楽しくお話させていただいた,加工品の確認のためにUSAパーツのピストンとベアリング,コンロッド等を預けて工場を後にした.その日の夕日はきれいで心もほっとした.
Cylinder Block 
・亀裂の溶接修理&水圧テスト
ヘッドボルト雌ねじ再生 UNC 7/16-14
・シートリング交換
インサート持込 銅溶浸焼結合金 φ40+0.133~0.155 高さ 7.7±0.1
締め代:0.07ねらい 穴深さ:7mmねらい 常温圧入で可. 
・トップデッキ面研磨(最小限)
No.2,3 燃焼室にさらされる面にでこぼこ様相.これは水が入って燃焼運転されるとこのようになるらしい.バルブシート周りに溶接補修があったので過去にそこが割れて水が入ったのかもしれないとのこと.
・ボーリング オーバーサイズ加工 +1.00mm(0.04inch)  
ピストン標準クリアランス 0.053~0.074 0.05ねらいとした.
・下部オイルパン雌ねじ修正
当方がねじ切ってねじがはいったままにしていたもの.

Crankshaft
 ・軸研磨 -0.05mm(-0.02inch)メタル仮組み測定
 標準クリアランス範囲より下限レベルをねらう軸径とした.

約2週間後,完成のメール. 甦ったブロックとクランクシャフト.なんともいい金属の輝き.完璧な仕上がり. ブロックの溶接部は応力を分散できるように,亀裂のあった部位とボルト穴周りに大きく施されていた.局部的であると溶接境界が弱点となりやすいが,これなら心配はない.バルブシートは銅溶浸材のため銅色が現れている.
バルブシートカットは自分で挑戦することにしたため,依頼しなかった.(我ながらセコイ.一緒にやってもらっても良かった) USAパーツの精度はきちんとあったとのこと.内燃機加工は奥が深く,加工料金は決して安くはないが,この仕上がりを見れば納得。 甦ってくれた充足感がある.とても勉強になった.


September 29, 2002

7 Procurement  調達

Mitsubishi Genuine Parts
今回のO/Hの要となる部品は排気バルブ,バルブシート,ピストン,ピストンリング,クランクベアリングである。まず,三菱純正が入手できるか当たってみたが,ほとんど生産中止扱いであった。パーツリストより部番はわかっているものの現物がなければ部番情報はむなしい。ちなみに入手できないが
価格情報 
シリンダブロック ¥362000~ 
排気バルブ¥3000~ 
吸気バルブ¥1750~ 
排気バルブシート¥4000~ 
ベアリング
(クランク¥9600~コンロッド¥4600~)
ピストン¥5100~ などである。

三菱純正で入手できる部品もあったので,それらは購入した。ヘッドガスケット類,クランクシール(フロント,リヤ)ヘッド-ブロック間の水ホース等々。

Retrofit, EX Valve Seat Ring 
排気バルブシートについては,とある伝手よりシートリング等を扱う会社の営業の方を紹介いただき,必要寸法を連絡すると,それに近い製品があることがわかり,それを使うことにした。助かった~。乗用車エンジン(4G5系)の排気バルブシートに使われているものでもちろん無鉛ガソリン対応,耐熱性のある焼結合金製で熱伝導性をよくするために銅が溶浸されているらしい。

Parts Order to U.S.A  
さて,O/Hの要部品であるが,ネット検索でUSAをあたることにした。これまで釣り道具やキャンプ道具などは個人輸入をしたことがあったが,自動車部品は初めてである。三菱製JH4はWillys CJ3B ハリケーンエンジン F134と同じであり,検索をかけるとウジャウジャでてきた。さすがアメリカ。オーバーホールキットなるものがあるらしく,ピストン,リング,IN/EXバルブ,バルブガイド,カムギヤ,ガスケット類,クランクコンロッドベアリング類 O/Hに必要なベース部品がすべてのオーバーサイズまで指定でき供給している。いろいろなショップで扱っているようである。価格$400~500安い!その中でKITの価格が安かったKrageMotorsports(テネシー州),KaiserWillysAutoSupply(サウスキャロライナ州)を選出した。ちなみにNorthstarWillys(ミネソタ州)ではF134のベアブロックが$250~とあった。使用にあたってはマシニングが必要かもしれないが,国内純正の価格は悲しいです。


Kragemotorsportsには部品の仕様などをメールで確認し,ピストン&リングはオーバーサイズ+0.04,クランクベアリングはアンダサイズ-0.02でO/H-KITと他カムシャフト,オイルホースなどを注文した。

KaiserWillysには オンラインカタログで詳細なパーツ説明があり,その中でF134用排気バルブの無鉛ガソリン対応用にStelliteの文字のものが。価格が一本$18と割高であったがステライトといえばコバルト系耐熱合金。O/Hキットには排気バルブはついていたが興味がったので,他IN/EXバルブシートとトランスファーM18のO/Hキット併せて注文した。

どちらも発注から1~2週間であっさり届いた。KaiserWillysについては 吸気バルブシートの注文品が L134 Go-devil用の排気バルブシートがはいっていた。吸気バルブは大きいはずなのですぐに違うことがわかった。invoice(送付品リスト)の部番はF134用吸気バルブシートになっているので,それを根拠に注文したものと違うとのメールを送った。

が数日反応がない。しかたなく深夜に国際電話をすることに。どきどきしながら「Hello・・・」怪しい英語でいろいろ話すと先方も承知で,すでにF134バルブシートを発送したのこと。先のバルブシートは返却しなくてもいいよとのことでラッキー! 
(下左.. 

KaiserWillysより到着

排気バルブシート 
左:L134用 右:F134用

しかし,その後日,もう1件。4本注文したステライトの排気バルブのうち一本が外観形状が違うものであることが発覚。寸法的には同じF134用のようであったが燃焼室面にくぼみがあるやつが一本混じっていた。なんやこれは~。速攻で画像データをそえてメール送信。今回はあっさりメールで返信があり、すぐ送ったとのこと。国際郵便,ギフト扱いで一本バルブが届いた。やれやれであるがUSAからの部品は何とかそろった。各USAパーツの所見は後に国内品との比較等をまじえて触れようと思う。

September 08, 2002

6 Strategy  作戦 -2-

各部品の状態検証と処置の続き......

3.Valve Train System --------- 動弁系
カムシャフトは三菱純正 J800517
合金鋳鉄製、カム部は焼きいれ処理。

吸気バルブ(表面を少し磨いています)と排気バルブ。排気バルブは傘裏(燃焼室側)に431とあった。やたらと白い付着物で磁石につけるとひっついたので、磁性のある材料のようである。耐熱性のあるオーステナイト系耐熱鋼ではなさそうである。

Parts
Condition,   状態 
  To Do,   処置   
Intake Valve
・スラッジ多い
 ステム磨耗
・交換
(U.S.輸入)
Exhaust
Vlave
・全気筒スラッジ等
 固着が酷い,
・No.4
 バルブフェース
 吹抜け
・交換
(U.S.輸入)
Camshaft

・ピーリング
(剥がれ,虫食い状態)
・交換
(U.S.輸入)
Cam Gear
特に異常なし
・継続使用
 or交換
Push Rod
特に異常なし
・継続使用
Rocker
Arm,Shaft
Arm:
スリッパ部に磨耗痕、
シャフト穴内面傷
Shaft:特に異常なし
・研磨修正
 清掃
 継続使用

4. Lubricating System --------- 潤滑系
Parts
Condition,   状態
To Do,  処置
Oil Pump
・特に異常なし。
 汚い。
・分解清掃,
継続使用
Oil Pan
・スラッジ堆積なし
・清掃,塗装
継続使用
Oil Strainer
・異常なし 
・清掃,
継続使用
Oil Filter &Bracket
・汚い
・ブラケット
 ヘッド固定部で割れ
・清掃,
継続使用
・割れ
溶接補修
Oil Hose
・硬化,汚い
・交換
Front Case
&Seal
・汚い,オイルシールにじみ・清掃,塗装交換

5. Cooling System --------- 冷却系
Parts
Condition,   状態 
To Do,   処置 
Water 
Pump
・特に異常なし。
・98O/H 
 リン酸皮膜処理,
 シール機械加工,
 シール,シャフト
 ベアリング交換
・継続使用
Thermostat
・異常なし。交換済み
・継続使用
Radiator
・漏れアッパタンク継ぎ目
・修理
(外注)
Hose,
Radiator
・98交換済み
・継続使用
Cock Valve 
Heater 
・バルブ動かない
・分解修理




6. Electrical System --------- 電装系
Parts
Condition,   状態 
To Do,   処置 
Generator
・特に異常なし 
・配線類が汚い
清掃、継続使用 
配線類整理
Regulator  
・異常なし

・継続使用
(新品確保済み)
Ignition coil
・異常なし
 2年前に交換済み
・継続使用
Distributor 
・汚い,
 負圧進角が怪しい
・分解清掃,補修
・継続使用
Spark Plug, 
Wires      
・汚い怪しい
・プラグコード
 2年前交換済み
・交換(B-4)


7. Fuel System --------- 燃料系
 Parts 
Condition,   状態 
To Do,   処置 
Fuel Pump
・特に異常はなし
・分解清掃,
 継続使用
・ダイヤフラム
 交換
Carburetor
・異常なし (O/H済み)
・継続使用
Fuel Pipe
(pump-cab)
・異常なし 汚い
・交換
(三菱純正)
Fuel Filter 
・異常なし
・分解清掃,
 継続使用




以上でほぼやることが決まった。 
まず、主要なO/H部品の調達(ピストン,ベアリング関係)、そして加工依頼から開始である。