October 23, 2002

8 Rebuild Work (2/8) ---- Cylinder Block,Crankshaft 

Crankshaft
引き取ってきたクランクシャフトは切り粉などが残らないよう油穴通路の清掃,ピン,ジャーナルは研磨したことにより表面での油穴のエッジがたっているので適当なドリルでもんで面取りを行った.酷い汚れもなく,クランクシャフトはこれでベアリング類とともに保管して組み立てに備える.

Cylinder Block - EX Valve Guide
懸念であった亀裂,バルブシートの交換はうまく終了した.次にバルブガイドの交換とバルブラッピング(摺り合わせ)である.バルブガイドであるが,新品バルブを挿入してみると,ガタが大きく少し首振り状態にあった.バルブガイドはUSA輸入パーツでO/Hキットに入っていたものを使用.キットの部品ははOMIX-ADAよりまとめらているもので,各パーツのメーカはさまざまで.ガイドはどこのものか確認できなかった.整備解説書にあるようなやり方でやってみたが,まったく抜けない.トーチで加熱したり,ボルトとつかって引き抜こうとしてもまったく抜けない.
最終的に100tonの荷重まで負荷できる設備があるところに持ち込み抜くことに.適当なボルトで当て治具として荷重をかけていった.1ton 2ton 3ton まだ荷重の指針は動く・・・ 次の瞬間 バキン という大音響. ブロックが逝ったか!! 観察してみるとガイドが動きはじめている.抜けた・・・.ふぅ良かった.結局No.1~4と抜き荷重は3.5~4.7tonであった. 新品ガイドにオイルを塗布して,ブロックトップデッキからガイド上端の位置が1inch(25.4mm)のところまで圧入.約2ton前後であった.整備解説書のようなやり方で抜けるのであろうか.JH4をやった方々のご経験をお聞きしたいところである.液体窒素を使うのかな.

▲参考 バルブガイド抜き、組み付け
長ナット、棒ねじを使う。

Exhaust Valve Seat Cutting , Rapping
まず準備した排気バルブのこと.オーバーホールキットについてきたも Federal Mogul社のSealedPowerブランドの製品であった.(無鉛対応) そしてもうひとつは Kaiser Willys Auto Supplyから購入したStelliteと表記されたいたもの(型番928342 V-1681).吹き抜けたJH4についていたバルブ(三菱マークがなかったので純正なのかどうかは不明 431と浮き出し)がある.材料の耐熱性を確認するために磁石でたしかめた.(左から FederalMogul社,KaiserwWillys社の,吹き抜けたJH4についてたやつ) 
排気バルブになどに使用される耐熱鋼は金属組織がオーステナイト組織であれば磁性を持たないのである.元々ついていたバルブはパチコーンと磁石が引っ付いた.FederalMogul性は弱く磁性をもっていた.Kaiserのものは全く磁性がなかった.簡易的にバルブ傘部の横を研磨して金属組織を観察した.Kaiserのバルブは 耐熱鋼SUH31に近い組織であったが,ステライトの組織は観察できなかった.盛金ではなく溶射程度なのだろうか.今回は磁性の有無の面からも耐熱性を期待できるKaiserからのものを使用することにした.
入手したバルブの組織写真 (左:KaiserW 右:FederalMogul ) 
Kaiserのものは 下のSUH31に近い粒状炭化物が見られる.

標準組織写真 (左:オーステナイト系耐熱鋼SUH31   右:ステライト コバルト耐熱鋼)
参考:排気バルブの重量計測結果[g]
Kaiser(V-1681)
1:118.1 2:117.4 3:118.1 4:117.7
FederalMogul 
 1:118.6 2:118.3 3:118.9 4:118.6

バルブシートカットはカッターを入手できたので自分でやることにしていたが,これを失敗すれば熟練の加工屋さんの成果をすすべて台無しにすることになるので,かなり緊張した.やるしかない,いけ~!という感じにやった.なんとかできた.カットした後はバルブコンパウンドにより摺り合わせをした.これでブロックに関することはほぼ終了で組み立てに備える.


バルブフェースとシートとの当たりの確認には,PILOT社ペイントマーカ 中字 ピンクカラーを用いた.バルブはリテーナとともに回転するため,ある程度全周があたっておれば,運転にてなじむだろう.

October 19, 2002

8 Rebuild Work (1/8)---- Cylinder Block,Crankshaft

The Machine Shop  内燃機加工屋さん
Cylinder Block,Crankshaft
今回の修理で一番の課題であるブロック修理とクランクの加工について.必要なことはブロックトップデッキの亀裂の溶接,バルブシートの交換,シリンダボアの加工,クランクシャフト ピン,ジャーナル軸の加工である.内燃機加工屋さんの知り合いや伝手があるわけではなく,加工屋さんをネット検索で探す.シリンダ,クランク.バルブシートなどの加工は定番なようで作業価格なども情報公開されており,とても参考になった.しかし,今回の場合,鋳鉄ブロック亀裂の溶接というのがあり,それについては個々に確認しなければならない.当初,私は学校でならった浅い知識レベルで鋳鉄は溶接なんかできないと思い込んでいた.ブロックに使われるねずみ鋳鉄,FC材,片状黒鉛鋳鉄 文字通り鉄の基地(きじ)に黒鉛が片状に分散している.溶接では局所的に高温になり冷却されるため,そのひずみ変化は黒鉛部分で応力集中となり,割れを生じやすいためである.これまたネット検索すると,鋳鉄の溶接は困難なものではあるができないことはないことがわかった.ひずみ変化をやわらげるため,予熱,冷却,溶接方法の工夫,作業者の熟練さで可能とのことで,修理することへの希望となった.

いろいろ加工会社を拝見させていただいた中で,福知山の木村内燃機様にお願いすることにした.自主制作されているウエブサイトで,穴のあいたアルミブロック,ヘッドの亀裂などの画像とともにこれは直ります,これは直せませんと紹介.「いろいろな方法でいろんなものを直します.できないこともありますが,できること 結構あります.」という言葉に惹かれてしまった.9月のはじめに,ブロックの亀裂やバルブシートの状態などの画像とともに打診.すぐに返信があり,鋳鉄ブロックの亀裂は直せますとのこと.詳細は現物確認で調整ということで.そして,ピストンやベアリングなどUSAパーツがそろったところで,ブロックとクランクを持って訪問した.
工場のたたずまいは,想像どおり,文字通り,内燃機加工.工場内はたくさんの仕事をしてきた雰囲気をもつ,重厚な工作機械が立ち並び,金属という材料に精度と機能を吹き込む工房である.早速現物を診ていただき,修理内容の相談.ほぼ事前にやりとりしていた内容でいけそうな感触で後日,見積もりと加工開始の連絡をしていただけるとのこと.溶接についてはここではできないため,溶接熟練の方がおられるところへ依頼するとのこと.過去にJH4も実績があり加工データもあるらしいとのことでますます心強くなった.なんとクロスカントリーヴィークル誌(CCV)もご覧になっているとのことで,楽しくお話させていただいた,加工品の確認のためにUSAパーツのピストンとベアリング,コンロッド等を預けて工場を後にした.その日の夕日はきれいで心もほっとした.
Cylinder Block 
・亀裂の溶接修理&水圧テスト
ヘッドボルト雌ねじ再生 UNC 7/16-14
・シートリング交換
インサート持込 銅溶浸焼結合金 φ40+0.133~0.155 高さ 7.7±0.1
締め代:0.07ねらい 穴深さ:7mmねらい 常温圧入で可. 
・トップデッキ面研磨(最小限)
No.2,3 燃焼室にさらされる面にでこぼこ様相.これは水が入って燃焼運転されるとこのようになるらしい.バルブシート周りに溶接補修があったので過去にそこが割れて水が入ったのかもしれないとのこと.
・ボーリング オーバーサイズ加工 +1.00mm(0.04inch)  
ピストン標準クリアランス 0.053~0.074 0.05ねらいとした.
・下部オイルパン雌ねじ修正
当方がねじ切ってねじがはいったままにしていたもの.

Crankshaft
 ・軸研磨 -0.05mm(-0.02inch)メタル仮組み測定
 標準クリアランス範囲より下限レベルをねらう軸径とした.

約2週間後,完成のメール. 甦ったブロックとクランクシャフト.なんともいい金属の輝き.完璧な仕上がり. ブロックの溶接部は応力を分散できるように,亀裂のあった部位とボルト穴周りに大きく施されていた.局部的であると溶接境界が弱点となりやすいが,これなら心配はない.バルブシートは銅溶浸材のため銅色が現れている.
バルブシートカットは自分で挑戦することにしたため,依頼しなかった.(我ながらセコイ.一緒にやってもらっても良かった) USAパーツの精度はきちんとあったとのこと.内燃機加工は奥が深く,加工料金は決して安くはないが,この仕上がりを見れば納得。 甦ってくれた充足感がある.とても勉強になった.